アートの仕事、だけではない出会い 「ART JOB FAIR」が光を当てたもの

アートの仕事、だけではない出会い「ART JOB FAIR」が光を当てたもの

株式会社artness代表取締役 / ART JOB FAIR主催|高山健太郎
2023.06.13
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「アートの仕事」と聞いて、どんな職業や仕事をイメージするだろうか。
美術作家やクリエイター、学芸員、ギャラリストにキュレーター。ぱっと思い浮かぶであろうこれらの職業名は、実は業界の仕事のほんの一部に過ぎない。例えば展覧会の制作ひとつにとっても、キュレーターはもちろん、作品を設置するインストーラーや、図録制作に関わるデザイナーやアート系の出版社、広報やアーカイブに関わる写真家や映像編集者など、多種である。

しかし、アートに関わる仕事がしてみたい、と考えても、業界に特化した求人情報サイトは数件しかない。インターネットやSNSで、施設や組織が個別に発信する採用情報を地道に探し続けるか、一般的な求人情報サイトへ稀に掲載される情報を、運よく見つけられるかどうか、である。一方で、雇用する側も、情報を発信しても広く多くの求職者へリーチできなかったり、そもそも多くの転職希望者と出会えないというジレンマを抱えている。

「ART JOB FAIR」は、そんな現状を打破する可能性を秘めた、アートの仕事に特化した画期的なジョブフェアとして、2023年1月、東京都内で初めて開催された。2日間で300名以上が来場し、多くの出会いと雇用の機会を作った非常に印象深いフェアだった。

今回は、ゼロから「ART JOB FAIR」を立ち上げた高山 健太郎(たかやま けんたろう)氏に、自身のこれまでのキャリアと「ART JOB FAIR」の舞台裏、そして今後の展望を伺った。取材は出展者でもあったART360°の桐 惇史さん、そしてフェア当日に求職者として参加していたインタビュアーも交え、三者それぞれの視点が交わる鼎談となった。

高山健太郎さん
Photo: Olivier Enoutor-K

はじまりは、福武財団でのボランティア

―まずは、大阪ご出身の高山さんが、瀬戸内で公益財団法人福武財団のお仕事に就かれるまでを教えていただけますか。

高山:キャリアのスタートは21歳、2004年頃の事です。地元・大阪の街中で、知人のアーティストたちの作品を、お金をかけずに展示する、ホームレス画廊を始めました。

これは現代美術家の小沢剛さんとの出会いが大きく影響しています。当時、ニューヨークへ語学留学していまして、小沢さんが銀座で行っていた「なすび画廊」【※1】の活動を知り、アートマネジメントの仕事に興味を持って、帰国後にホームレス画廊の活動をスタートさせたんです。ただ、当時は展覧会を開くための経験やスキルに乏しく、この先、活動を続けていくためには、どこかで一度、専門的な経験を積まなければ厳しいな、と感じていました。

そんな時たまたまインターネットで、瀬戸内海の直島にオープンする地中美術館【※2】で、ボランティアスタッフを募集していることを知ります。当時は就職氷河期。美術館での仕事は、本当にごく一部の限られた人しか叶わない狭き門でしたので、ボランティアでもいいから美術館で働いてみたい、と応募しました。 


― ボランティアから始まって、正社員となり、のべ7年に渡ってお仕事をされていましたね。

高山:はい。福武財団には2004年11月から2011年5月まで在籍していました。

ボランティアだったため半年くらいで大阪へ戻るつもりでした。しかしボランティア活動の2ヶ月後の2005年1月に「瀬戸内国際芸術祭」にむけて「瀬戸内アートネットワーク構想推進調査」【※3】が始まったんです。どんなアート活動ができそうか、瀬戸内海の様々な島を巡って調査を行うことで、直島だけで行われているアート活動が、この先、瀬戸内の島々へ広がっていくことに期待を抱きました。このままここに身を置いていたら、大きな経験ができるかもしれない。自分の活動は中断してでも、このタイミングで関わり続けたい。そう思って福武財団の仕事を続けることにしました。


―当時 関わっていたプロジェクトやお仕事について、具体的に教えてください。

高山:「瀬戸内アートネットワーク構想推進調査」が終わった後、直島全体を舞台に開催した「直島スタンダード2」【※4】が決まり、2006年10月の開幕に向けて展覧会づくりに携わりました。また、これをきっかけに始まった「直島コメづくりプロジェクト」【※5】では、稲作が途絶えた直島のコメづくりを復活するため、地域の方々と耕作放棄地を田んぼに戻す活動を行いました。その後、2008年には犬島(いぬじま)に残る銅製錬所の遺構を保存・再生した犬島精錬所美術館【※6】の開館に関わり、2010年には豊島(てしま)の休耕田だった棚田を地元住民とともに再整備し、アーティスト・内藤礼さんの作品が恒久設置された豊島美術館【※7】が開館します。私は、地中美術館に加え、犬島のプロジェクトには2007年から、豊島のプロジェクトには2008年から、作品制作とそのメンテナンス担当、そして豊島・直島のコメづくりの担当として、3つの島を行き来していました。

当時は直島の漁師さんから譲り受けた自家用船(漁船)で各島を移動しながら様々なプロジェクトに携わっていたとのこと。

「その土地で育まれてきたアート」に携わりたい

高山:2011年3月に東日本大震災があり、災害からの復旧・復興が第一優先となった世の中で、国内外から島を訪れて美術鑑賞をするお客様がぐっと減り、このまま直島で仕事を続けるか改めて考え、福武財団を退職しました。

直島では、例えばかつて桟橋があり船が停泊していた場所に、草間彌生さんの作品が置かれ、「ここにしかない風景」が作られています。しかし、その場所へ作品を観に行くことができない世界が来てしまったとき、観光ではなくてもアートが成立するような活動ができないだろうか、という問いが、自分の中に生まれていました。

そんな時、かつて福武財団で上司としてお世話になっていた秋元雄史さん(2023年現在は東京藝術大学名誉教授)から、金沢や北陸で育まれてきた工芸に携わる仕事に声をかけていただきました。長らくその土地で作られてきたからこそ、現代まで存在し続けている理由があり、その土地で生まれた必然があるはずだと、ぐっと興味がわき、関わってみたいと考えるようになりました。 


―それがきっかけとなり、ディレクターとして、株式会社ノエチカ【※8】の創業メンバーに加わったのですね。

高山:はい。ノエチカは、2013年4月、北陸3県を広域文化圏としてつなげること、そして海外へ発信していくことをミッションに、ディレクターとして創業に携わりました。社名も「能登」「越中・越前」「加賀・金沢」 に由来しています。

2021年に独立するまでの8年間、「HATCHi 金沢-THE SHARE HOTELS-」【※9】や「KUMU 金沢 THE SHARE HOTELS」【※10】「ハイアット セントリック 金沢」などに、石川県の工芸作家の作品をホテルの中に設置するコミッションワークなどを手がけました。また、2017年からスタートした、国内唯一の工芸に特化したアートフェア「KOGEI Art Fair Kanazawa」【※11】の立ち上げ、石川県の伝統工芸・九谷焼を世界に発信するイベント「KUTANism」【※12】を2019年に立ち上げに携わってきました。

九谷焼窯元でのトークセッションの様子 (写真提供:GO FOR KOGEI 実行委員会)

―独立・起業しようと考え出したのはいつ頃のことだったのでしょうか。

高山:アートの仕事をはじめた時から、いつかは自分で事業を起こしたい、という考えはありましたが、直島と金沢で様々なプロジェクトに携わることができ、2019年に独立を考えました。2年の準備期間を経て、2021年4月に株式会社artnessを創業しました。

アート業界は、社会人になった当初からフリーランスで活動する方や、20代後半ぐらいで独立される方も少なくないですが、私は38歳での独立でした。21歳でキャリアをスタートさせてから17年、自分には必要な時間だったと思います。 


―2021年4月、というと、コロナ禍の真っ只中ですね。

高山:はい。なので、金沢で携わっていたような、ホテルへの作品のインストールのお話は、いくつもストップしてしまったんです。コロナ禍以前は、インバウンドの観光客が右肩上がりに増えていく見通しから、「文化立国」の機運が高まっていました。私は、これから日本がフランスのように観光と文化がもっと密接になっていくためにも、日本各地の文化資源をよりブラッシュアップして訴求する事業をしたい、と考えていたのですが、方向転換を余儀なくされましたね。文化観光事業だけではなく、アートと社会を隅々までつなげるような事業を作らなければ、と。


―そこから「ART JOB FAIR」の構想へとつながっていくのでしょうか。

高山:はい。株式会社artnessは、社会の隅々にまでアートを広げ、新しい価値創造や課題解決を行うことをミッションに掲げています。21世紀にアートが求められる価値や役割とは何か。改めて考える中で、例えば、アートと就労、アートと教育、アートと福祉など、これまでアートがつながっていなかった領域とつながることで、「アートの社会的価値」を高められるのでは、と考えたのです。

アートの文化的価値や経済的価値は近年特に注目や関心が高まっていると思いますが、アートの「社会的価値」はそれらと比較すると関心が低いと感じていました。アートの社会的な意義の理解が十分に広がっていなかったり、アートを支える職業や働き方の認知度が低かったりと、アートの社会的価値を高めていければ、文化的価値や経済的価値とが好循環を作り、日本のアートの底力を高めていけるのではないかと考えました。

「ART JOB FAIR」の構想のきっかけは、アーツカウンシル東京【※13】が主催する「芸術文化創造活動の担い手のためのキャパシティビルディング講座」の受講でした。

講座は、全国11都府県から16名の文化芸術の担い手がオンラインで参加し、アートの本質的な価値を問い、社会とのつながりのなかで多様な意味を見出し、創造活動を続けていくための思考力やスキルを磨く、という内容でした。この時に初めて、様々なアートの働き方やアートワーカーの職種を知ったと同時に、表現の場を支えるアートワーカーの雇用や育成の問題に関心を抱きました。人生設計が描きづらかったり、キャリアアップの機会が非常に限定的だし、そもそもアート業界で働くことそのものをもっと世の中に伝えていきたい、アートワーカーへの社会的関心を高めていきたい、と考えたのです。

アートワーカーを通して、「アートの社会的価値」を高めるために

―「ART JOB FAIR」をやろう!と決めて、最初に考え、取り組んだことは何でしたか。

高山:思い立ったものの、そもそも本当にアートワーカーのジョブフェアのニーズがあるかをはかる意味も含めて、クラウドファンディングを実施しました。資金を集めながら支援者や共感してくれる方と出会えたらという思いでしたが、結果として達成率125%を超え、162名という多くの方々からご支援いただき、大きな手ごたえが得られました。

クラウドファンディングの終了後、出展者を募るために300社以上へご連絡しました。アート業界の求人掲載サイトに掲載履歴がある企業・団体や、インターネット上で採用情報を掲載していたところへ個別に連絡をとり、クラウドファンディングの結果から、ニーズがあり多くの支援者がいることや、無料ではないが一般的なジョブフェアよりも安価に出展できることなどをご案内し、参加表明いただいた10社が決定しました。


桐:ちなみに「ART360°」が出展を決めた理由は3つありました。

ひとつは高山さんと以前から面識のあったART360°ディレクターの辻(ACTUAL Inc.代表)が、高山さんの今までの活動を知って共感性を感じ、artnessの事業を応援したいと思っていたこと。次に我々が拠点を置く京都以外で、アート業界内での横のつながりを増やしていきたいと考えたこと。そしてもうひとつは雇用に繋がらなくとも、我々のプロジェクトに共感してくれる求職者との良いつながりができたら、という思いでした。特にアート業界では領域横断的なスキルセットが求められるので、既存の採用の枠組みにとらわれない、多様な可能性を検討したかったんです。

だからこそ多くの方とお会いしたかったのですが、そもそもアート業界に興味をもつ人たちを呼び寄せるという観点で、ジョブフェアの内容はもちろんですが、場所や空間の設計も重要だったかと思います。その観点で「KAIKA TOKYO」【※14】という場所で開催した理由を教えてください。


高山:KAIKA TOKYOは、アート作品のストレージ(収蔵庫)という、通常は見られないような"アートの舞台裏"を併設する、ユニークなホテルです。今回は10社という出展者の規模だったからこそ、ストレージを見学したり、トークイベントに参加したり、カフェに滞在したりと、この場所そのものも楽しんでいただけるようにまずはしたかったんです。実際、来場者アンケートでも「来場して良かった」が65%、「どちらかというと良かった」が22%、計85%と高く、その要因として「スタッフの対応や会場の雰囲気」を挙げてくださった方が多かったですね。

ART JOB FAIRの会場となったKAIKA TOKYOのエントランス。
1F受付の様子。初日は開場と同時に多くの人が来場した。
来場者の様子。参加者の参加証は紐の色が分けられ、「キャリアアップ」「ジョブチェンジ」「学生や未経験」「イベント参加や視察」など出展団体がどのような目的で来場している人か一目でわかるような工夫がなされていた。

―私は求職者として参加してみて、客室ひとつひとつを観に行くことそのものも、体験として面白かったです。また、室内でゆっくり落ち着いて、出展者の方々とお話しできたことも好印象でした。

高山:ありがとうございます。アンケートでも、特に求職者の満足度が非常に高かったですね。「カジュアルで落ち着いた雰囲気の中で、思っていた以上に深い内容まで話せた」「リラックスして会話ができた」という声が寄せられました。一方で、軽く様子を見たいという視察目的の方にとっては、少し閉鎖的で入りづらかった、という声もありました。いろんな意見をいただいてみて、私自身は、もっと開かれた場にしたいと考えています。


桐:出展者側の印象として、事前に出展者が集まって話すオンラインのトークイベントや当日の交流会など、出展者同士のコミュニケーションの場もかなり多かったと感じました。アート業界で働くということそれ自体を、みんなで検証したい、というような目的を感じたのですがいかがでしょうか。


高山:そうですね、出展者の皆さんが「参加者同士の横のつながり」を目的のひとつにされていることは把握していましたので、このイベントの目的が、単に雇用者と求職者をマッチングさせるだけではなく、アート業界全体の人的基盤の強化・活動基盤の強化につながれば、と考えていました。出展者の課題が解決し、横のつながりの中で、お互いの課題を補完し合えるような関係づくりができれば、と。

ただ、当初は何より来場者数を増やしたかったので、できるだけ多くのイベントを設計していました。課題は、どうしたらアート業界で働きたい人にリーチできるのかで、例えば美術館にチラシを送ったら、美術作品を観に来る人にはリーチできますが、アート業界で働きたい人にリーチできるかは分かりません。なのでプレイベントとして「ジョブチェンジ」「キャリア復帰」「キャリアオーナーシップ」という3つのテーマで企画・開催し、YouTubeで配信したほか、SNS広告も少し出稿しました。結果、2日間の会期で310名もの方にご来場いただきました。きっかけは「口コミ・人や団体からの紹介」が32%。次いで「Instagram」が20%でしたね。

また、来場者の55%が求職者で、その他「トークイベントへの参加」を目的に訪れた方が14%、視察目的の方も22%いらっしゃいました(複数回答)。私自身、こういったジョブフェアにこれまで参加したことがなかったのですが、「KOGEI Art Fair Kanazawa」では、作品売買だけでなく、工芸関係者が一堂に集まって情報交換する場でもあったので、様々な目的で訪れる方々のニーズに合うコンテンツづくりは当初から考えていました。

出展者のブースはKAIKA TOKYOの客室となっており、実際に出展者が泊まることもできた。部屋というある種プライベートな空間で交わされる会話は、従来のジョブフェアで交わされるそれよりも柔らかで、親しみがあったように思う。

―ちなみに、具体的な広報戦略やPRの内容は、当初から予め決めていたのでしょうか。

高山:決めていませんでした。正直、後手にまわってしまったのは反省点のひとつです。例えばWebサイトは作ったけれど、事前のトークイベントの中身は調整中だったので、具体的にご紹介できなかったり。サイトデザインなどはデザイナーに依頼しましたが、クラウドファンディングをして資金を集める、出展者を集める、協賛者を集める、そして集客・PRという順で、ひとつひとつの行動に対して、基本は私ひとりで動いていました。イベント全体の内容や方向性は、キャパシティビルディング講座で出会った仲間がアドバイスしてくれました。


桐:「ART JOB FAIR」はもちろん雇用機会創出のためにあると思いますが、同時にartnessの事業として先ほど言われていた、アートの社会的価値を高めるためのコミュニティ作りとしても、今後機能するのではないでしょうか。出展者同士のつながりはもちろん、参加者にも業界関係者や業界に関わろうとする人たちがいて、単に雇用主と求職者という関係性を超えた化学反応が生まれそうな場でもあったと思います。


高山:今回開催してみて、雇用者と求職者をマッチングするような場として開催したい、仕事に出会う場になればいいな、と思っていましたが、仕事だけではなく、仲間や友人に出会えるような場になっていたんだな、と気づきました。アンケート結果でも、「アートの仕事の情報収集や、知識やつながりを得たい」から訪れた、という回答が半数以上を占めたんです。つまり仕事を得たい方だけではなく、情報や知識を得たい方、つながりを得たい方も一定以上いて、仰る通りネットワークやコミュニティづくりの場でもあったんですね。

実は、普通のジョブフェアではありえないことですが、アンケートでは「また参加したい」という回答が85%もあったんです。仕事が決まっていたら、また、ってないことだと思うのですが、ここが私がやってみて良かったと感じたポイントでした。どこかに就職して働いていても自己研鑽をしたい、ネットワークも作りたい。そういう人達が集える場所が作れたことは、とても大きかったです。

実際、アートの仕事って、知人や友人のつながりから仕事を得ることも多いんですよね。ネットワークづくりが仕事につながっているんです。だから「ART JOB FAIR」においては、求職者と雇用者が出会うだけではなく、横のつながりがほしいという人達が集まって、友人になり、仕事につながっていく。そんな機会が創出できるのでは、と思いました。

今回、参加者の8%にあたる24名程度が、何らかの仕事のマッチングにつながった、という結果が出ています。それ以外の方々も、満足度が概ね高く、また参加したいと回答してくれていることは大きいです。仕事につながることも、仕事の手前の仲間づくりも、大切にしていきたいですね。

ART JOB FAIR開催の2日間は毎朝、高山さんから出展者に数字の報告や事例紹介など、手厚いフォローがあった。
初日のオープニングパーティーの様子。出展者同士の交流会も多く、多くの出展団体や関係者が情報交換を活発に行っていた。
初日に行われたイベント、「芸術表現を発展させる、プロデュースとマネジメントの力」の様子。
2日間という短期間に関わらずART JOB FAIRでは計8つの講座があり、アート業界での就業に関して多視点で参加者と共に考えていた。

「アートの仕事に出会えるジョブフェア」から、「アートの仕事と仲間に出会えるジョブフェア」へ

―最後に、これからの高山さんの展望、「ART JOB FAIR」の展望をお聞かせください。

高山:今回の結果やアンケートをうけて、2回目以降の開催にあたっては、より広い場所で、多くの方に参加いただける、より開かれたフェアを行いたいと考えています。そのために、6月12日(月)から7月31日(月)まで第2回目となるクラウドファンディングにも挑戦します。

そして、「ART JOB FAIR」を継続的に開催できる仕組みづくりを進めたいと思っています。将来的には地方開催や、チームづくりも必要だと考えています。「ART JOB FAIR」ならではの価値を広めて、持続可能なフェアの開催につなげていきたいですね。「アートの仕事に出会えるジョブフェア」から、「アートの仕事や仲間に出会えるジョブフェア」へと、仲間の価値をもっと大切にして打ち出していきたいです。 


―私自身も、他の参加者の方々とお話しし、お互いの仕事の話だけではなく、最近気になっていることや好きな展覧会の話などへ話題がどんどん広がり、この先、何か一緒にできたらいいね、と連絡先を交換しました。また、今回のようにART360°の関連メディアである+5に繋がり、インタビューを担当することになりましたし、他の出展者の方とも引き続きコミュニケーションをとって、案件のご相談などをいただいています。どのご縁「ART JOB FAIR」という場だったから生まれたものだと思いますし、まさに仕事と仲間の両方に出会えるフェアでした。


桐:求職者と話をしていて、「つながりを作るために参加した」という声が多くあったので、高山さんがおっしゃる通り、参加者同士のつながりや仲間づくりは、業界活性化の観点からも効果がありそうですね。そしてアート業界の仕事は、そもそも仕事内容が明確に言語化されていない部分も多いので、求職者にとって潜在的なポジションのニーズを持つ企業や団体はきっと多いと思います。同時に企業・団体サイドも「専門性」にこだわらず、多様な視点で求職者と話をすることで、自分たちも気づいていなかった新たな雇用の必要性に気づくことができるように思います。


高山:そうですね。最近「コネクテッドラーニング」という言葉がよく聞かれるようになっています。先生から教わって学ぶだけではなく、デジタルツールを活用し、自分たちの興味関心があることを共に学ぶという新たな教育の在り方ですが、アート業界では、いわば「コネクテッドワーキング」のような働き方が増えてきていると感じています。

アート業界の中では、企業・団体同士も、個人同士も、お互いの興味関心が近いところにあるので、お互いができること・できないことや、得意なこと・苦手なことを話し合い、プロジェクトを実践してみる。そういったアートの新しい仕事そのものをつくる機会が、「ART JOB FAIR」を通して提供できるのではないかと考えています。世間一般では、大きなスポンサーや事業主から仕事やプロジェクトを依頼されて従事する、というワークスタイルが多いかもしれませんが、アート業界ではより主体的に、いろんなプロジェクトが生まれていく、近しい興味を持っている人たち同士でつながりながら一緒に取り組む、という働き方がもっと増えていけるかもしれません。

アートに関わる仕事そのものの在り方において、クリエイティビティって大事だと思うのです。仕事って自分で何かを生み出していく、新しいこと・ものを生み出していくっていう意味で言えば、「ART JOB FAIR」やartnessが事業としてできることはまだまだたくさんある、と考えています。

取材場所の「MIROKU NARA」にて
作品:《piano note》澤井 玲衣子
(THE SHARE HOTELSの多くで、高山さんが作品選定やキュレーションに関わっている)

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関連情報

株式会社artness

アートの文化的価値だけでなく、社会的価値の向上をめざすことで、地域社会の新たな価値創造や、課題の解決を行う。その場所がもつ固有の特質を生かした空間プロデュースやキュレーションをメインとして事業を展開している。同社のHPにART JOB FAIR2023の報告書はもちろん、これまでの取り組みも掲載されている。
(URL最終確認:6月13日16時00分)

ART JOB FAIR 公式サイト
(URL最終確認:6月13日16時00分)

第2回 ART JOB FAIR クラウドファンディング
期間:2023年6月12日(月)〜7月31日(月)
(URL最終確認:6月13日16時00分)

第1回目のART JOB FAIRのクラウドファンディングサイトでは高山さんご自身が設立経緯やこのイベントにかける想いを語っている。
(URL最終確認:6月13日16時02分)

取材協力

MIROKU Nara by THE SHARE HOTELS

THE SHARE HOTELSは、「地域との共生」を目指すホテルブランド。株式会社リビタが運営し、今回取材場所としてご提供いただいた奈良の「MIROKU」に加え、石川県の「KUMU」と「HATCHi」、広島の「KIRO」、京都の「TSUGU」と「RAKURO」、北海道の「HakoBA」、ART JOB FAIRの会場となった東京の「KAIKA」、「LYURO」など、地域の特性や目的に合わせて構成された9つのホテルを展開している。
(URL最終確認:6月13日16時02分)


ここでは取材場所としてご協力くださった、MIROKU奈良さんの館内と、高山さんが関わったアート作品を一部ご紹介する。
取材で使用させていただいた部屋「Junior Suite with Japanese-style」の一角
地下1階ラウンジの様子。MIROKU奈良の空間は、建築家で美術家の佐野文彦氏が設計している。
本堀 雄二《弥勒》2019
舘鼻 則孝《Descending Layer》2021



注釈

【※1】なすび画廊
従来のギャラリーシステムに対する新たな提案として、木製の牛乳箱の中に作品を展示し、銀座の街路樹に並べる、という活動をしていた。画廊の名前はかつて東京・銀座にあった現代美術ギャラリー・なびす画廊を模してつけられた。
(URL最終確認:6月13日16時05分)

【※2】地中美術館
美しい景観を損なわないよう、建物の大半が地下に埋設した美術館。地下にありながら自然光が降り注ぎ、作品や空間の表情が刻々と変わる。設計は安藤忠雄氏。クロード・モネが手掛けた最晩年の「睡蓮」シリーズ5点を自然光のみで鑑賞できるほか、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が恒久設置されている。
(URL最終確認:6月13日16時05分)

【※3】瀬戸内アートネットワーク構想推進調査
2005年に直島福武美術館財団が「瀬戸内アートネットワーク構想」を打ち出し、国土交通省四国地方整備局の元、ベネッセアートサイト直島が、「瀬戸内アートネットワーク構想推進調査報告書」を取りまとめた。背景として、現代アートによる地域活性化が進んでいる直島を中心として、アートを軸とした広域ネットワークを構築し、瀬戸内海に新たな文化エリアの形成、それによる国内外からの観光客誘致を狙いとするものがある。これらが2010年開催の瀬戸内国際芸術祭へと繋がっていく。
(URL最終確認:6月13日16時05分)

【※4】直島スタンダード2
上記年表より、2006年10月「直島スタンダード2」をクリックするとプロジェクトが表示されます。
(URL最終確認:6月13日16時05分)

【※5】直島コメづくりプロジェクト
(URL最終確認:6月13日16時05分)

【※6】犬島精錬所美術館
(URL最終確認:6月13日16時08分)

【※7】豊島美術館
(URL最終確認:6月13日16時08分)

【※8】株式会社ノエチカ
(URL最終確認:6月13日16時08分)

【※9】HATCHi 金沢 THE SHARE HOTELS
(URL最終確認:6月13日16時09分)

【※10】KUMU 金沢 THE SHARE HOTELS
(URL最終確認:6月13日16時09分)

【※11】KOGEI Art Fair Kanazawa
(URL最終確認:6月13日16時09分)

【※12】KUTANism
(URL最終確認:6月13日16時09分)

【※13】アーツカウンシル東京
芸術団体や民間団体、NPO等と協力し、芸術文化の創造・発信を推進し、東京の魅力を高めるため多様な事業を展開。人材育成の他、文化創造拠点の形成 (東京アートポイント計画)や、様々なプロジェクトへの助成、イベント開催、若手アーティストの活動支援などを行っている。
(URL最終確認:6月13日16時09分)

【※14】KAIKA TOKYO
「KAIKA」は見せる収蔵庫を意味する「開架」という意味に加え、日本のアート文化を広めて「開花」させ、アーティストの才能「開花」のサポートをしたいという3つの「KAIKA」に対する想いが込められている。その名の通り、普段は見ることのできない収蔵庫を、来館者が見学できるように設計されており、2年に1度、多ジャンルのアート作品を対象とした公募展を開いている。入賞者には2年の収蔵展示権が与えられ、国内外問わず、数多くのアートファン、関係者に鑑賞してもらえる仕組みを設計している。ART JOB FAIRでは、求職者の多くが熱心に館内のストレージ作品も鑑賞し、求職と鑑賞という通常相容れる機会がない時間を体験していた。
(URL最終確認:6月13日16時09分)

INTERVIEWEE|高山 健太郎(たかやま けんたろう)

アートプロデューサー/キュレーター
1982年大阪市生まれ。2004年公益財団法人福武財団に入社。2005年から「瀬戸内国際芸術祭」の準備に携わり、2011年まで直島、豊島、犬島の美術館の立ち上げやアートプロジェクトに携わる。2013年にディレクターとして文化事業会社ノエチカの創業に携わり、「KOGEI Art Fair Kanazawa」や「KUTANism」など石川県の地域文化である工芸のまちづくりやツーリズムなどに8年間携わり、2021年4月独立。アート事業会社の株式会社artnessを創業。2022年に国内初のアートに特化したジョブフェア「ART JOB FAIR」を開催する。アートプロジェクトのキュレーションやプロデュースを数多く手掛けている。

INTERVIEWER| Naomi

ライター・インタビュアー・編集者・ミュージアムコラムニスト 静岡県伊豆の国市生まれ、東京都在住。
スターバックス、採用PR、広告、Webディレクターを経てフリーランスに。
「アート・デザイン」「ミュージアム・ギャラリー」「本」「職業」「大人の学び」を主なテーマに、企画・取材・編集・執筆し、音声でも発信するほか、企業のオウンドメディアや、オンラインコミュニティのコミュニティマネージャーなどとしても活動。好きなものや興味関心の守備範囲は、古代文明からエモテクのロボットまでボーダレス。 
Web : https://lit.link/NaomiNN0506